ノラと呼ばれた男【壱】






互いの拳と拳が交差した時、



赤鬼の拳が空を切る

まるで、それは……わざわざ拳に当たりに行く様で。自殺行動だと思った






最初から、この人は対等に闘う気なんてなかったんだ


自分が殺られる事で、彼等の言う、


誠意を示したかったんだ。









それが、爛派に手の平を返した奴等でも元仲間だから……


だから、その尻拭いをするために口実を作った。‘’私を拉致した‘’という形で










強く瞼を閉じた赤鬼に対し、迅は握ったままの拳を振り下ろす。


場所は鳩尾……………………ではなく、


振り下とされた場所は、頭頂部で、






しかも、殴った音すらしない


ただ、そこに拳を乗せる形で…………、










「お前の仕事は終わった」



「……え、」



意味が分からず、力の抜けた声を出す赤鬼に比べ、

私を見下ろしていた青鬼が、くつくつと喉を鳴らして笑っていた。




「お前、ホントいい所に拾われたな」



「?」


くしゃり、と乱暴に頭を撫でられ、青鬼は私の身体を自由にし、軽快の足取りで赤鬼の前に立つ

何が始まるのか、さっぱり分かっていないのは私だけなのか心なしか空気が緩んだ





「失礼だとは思ったんですけど、調べさせてもらいました…乱鬼の事」


「へったくそな根回しせずに、相談聞いたっつーの」


「えー、でも時雨最初信じてなかったじゃん」







などなど、いっきに話すから何が何やら


「まぁ、流石に姫が押し倒されてたのは想定外でイラっときたけど」


嗚呼、それね。私も気付いたら押し倒されてたからビビッたわ

何気、天井のシミが絵に見えて……って話が脱線してるわ←




「すまなかった」

思わず自分の世界に行ってた私を他所に、深々と頭を下げる二人

もう二人は……と言うか全員、闘う気がないのは確かで、




「言った筈だ、もう、お前の仕事は終わった。謝る必要はない」



「じ、ん……さん」



「さっきの、あの喧嘩で‘’敵対してる乱鬼‘’は消えた

今いるのは、俺らと対等の立場にいる乱鬼だけ。違うか?」