ノラと呼ばれた男【壱】

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【??side】










壽 龍生-コトブキ リュウキ-

その男は突然現れ、突然、我ら「乱鬼」に乗り込んで来た

たった一人で、30人を相手に、

殴り、殴られ、ふらつき、口から血が出ていても笑っていた




きっと誰もが、ヤツを相手にして思っただろう


こいつは気が狂ってるんじゃないか、と






「おいおいおいおいっ、


こんなもんかよ、なぁ?一人相手に手加減してんのか、ああ゛?」



と、口元を拭い、片手で襲い掛かって来た男を手加減なしで殴り飛ばした

本気出せよ、殺す気で来いよぉ

そんなヤツのイカれた台詞が場を支配し、誰もが一歩、後ずさる






「なぁ、お前さ……なんで一人で来たの」



と、大き過ぎず小さ過ぎずの声で言葉を発したのは伊月 零-イツキ レイ-で

下っ端が退いた道を、ゆっくりと歩き

壽 龍生の前で歩みを止めた





「何ぃ、次はアンタが相手してくれんの」



「それでもいいよ、……でも質問の答えにはなってないよ」


と、楽しげに笑む伊月。そんな姿を目にして「あ、楽しんでるな」と客観的に見ていた。

というか、この人のキレた姿は見たことがない





何度、「懐でかい人だな」と思った事か






「嗚呼、そんなの決まってんじゃん




一人で来た方が、その分、喧嘩できんじゃんよぉ」






「へぇ……喧嘩、好きなんだね」