「キモイ!」


「えっ…?」



“キモイ”


いきなりそう言われた男の子達の表情が、リーダー格を筆頭にして全員引きつっている。


だけど瑞穂はそんなのおかまいなしで、更に追い討ちをかけるように


「キモイ!キモイ!キモイ!あんた達キモイ!こんな事してバカじゃないの!マジ、キモイ!」


急に瑞穂は“キモイ”と連呼し、男の子達を罵倒し始めたのだ。


瑞穂が“キモイ”と連呼したのは


『このままではマズイ。』


そう察知した為の防衛本能だったのか、それとも窓伝いにやってきた男の子達に驚かされた事への反撃だったのかは分からない。


どういう理由があるにせよ、


こんなに“キモイ”と連呼している瑞穂を見るのも初めてだし、


多分彼らも、こんなに“キモイ”と言われたのは初めてだったに違いない。



気付けば途中から、他の子までもが一緒になって“キモイ”と連呼していた。


言われた側はどん底まで落ち込みそうな程の“キモイ”という言葉が飛び交う中、


突然、外から


「コラーッ!!お前達!!」

という、男の人の怒鳴り声が聞こえた。


「やっべぇ、先生だ!!」


彼らが慌てている様子から、その声の主は彼らの学校の先生らしかった。


「お前ら部屋に戻れ!危ないだろう!!バカモノ!!」


彼らの学校の先生はカンカンに怒っていて、チラッと窓の下を見てみると、3人の先生が懐中電灯を照らして男の子達を見ている。


まるで警官にみつかった泥棒のようだ。


「やべぇ、行こうぜ。」


男の子達は相当焦っていたのだろう。


私達には何も言わず、また窓伝いにそそくさと戻っていく男の子達の様子を私達は無言で見送った。