私達はいつもの登校時間よりも、随分早くに集合した。


「じゃあクラスごとにバスに乗って!」


学年主任の先生の合図で、私達はぞろぞろとバスに乗り込んだ。


チラッと相葉先生の姿を探すと、相葉先生は他の先生達と話しながら、生徒達が全員乗り込むのを待っているようだ。


『同じバスだったらいいのに。』


そう思いながら先にバスに乗り込んだ私は、まだ外にいる相葉先生を見つめた。


その時、ふいに相葉先生と目が合ってしまった。



急に目が合った事でドキドキしながら軽くニコッとしてみると、それまで真顔だった相葉先生も、軽くニコッと微笑んでくれた。


こんな小さな出来事でも、私は最高に幸せになれる。


とっくに相葉先生にフラれて失恋してるんだけど、実際の所、何も変わっていないような気がする。


相葉先生の私に対する接し方も、


私の気持ちも―…




「あ…っ。」


思わず声が出そうになったのは、生徒全員が乗り込んだ後、私が乗っているバスに相葉先生が乗ったからだった。


相葉先生はクラス担任と一緒に、一番前の席に座った。


「あの隣に座りたいでしょ。」


瑞穂がコソッといたずらっぽく言った。


「もう!」


他の友達に聞かれたんじゃないかと思うと、私は気が気じゃない。


だって…


先生に本気で恋してるなんて他の友達が知ったら、みんな呆れるんじゃないかって思うから。


確かに相葉先生は生徒から人気があるけれど、そんな手が届かない相手よりも、年相応の男の子を選ぶ人の方が圧倒的に多いはず。


それ以前に、教師に恋をする気持ち自体を理解してもらえないかもしれない。


だから私は、瑞穂と梢のようにとても親しい友達以外には好きな人の話をした事がない。


「では出発しまーす。」


クラス担任の合図で私達の修学旅行が始まった。