海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

プリントに書いてあった住所の辺りには、私の予想よりも少し早く、15分程で着いたのだけれど、


アパートの場所をきちんと分かっていなかったせいで、私はその町内をグルグルと回り続けた。


もしかしたらその辺りの住人に、“怪しい女子高生”だと思われているかもしれない。


ドキドキしながらペダルを漕ぎ続ける私は、


『どうか先生と鉢合わせしませんように。』


と、いつも先生に会いたがる自分とは思えないような、矛盾した気持ちでいっぱいになっていた。


『先生には会いたいけど、お家の前で会っちゃったら、どんな顔をして何を言えばいいのか分かんないよ…。』


そう、思っていた。


「どこだろう?」


細い道も含めて、1本、1本、全ての道をキョロキョロしながらゆっくりと通っていく。


プリントに書かれていた、先生が住んでいるらしい“ひかりコーポ”というアパート名が目印だった。


白樺並木が続く遊歩道に出てから、また違う道に入ってすぐの事だった。



“ひかりコーポ”



建物にかかっている看板が目に入った。


『あった!!』


私は見つけられた喜びで、パァッと顔が緩みそうになるのを堪えながら、そのアパートの横を通り過ぎようとしていた。


この時私がいたのは、アパートの裏側。


そのままアパートの横を通り過ぎると、玄関が私の背の方にくる事になる。


更にゆっくりとペダルを漕いだ。


すると…



シャーッ



水が流れる音が聞こえてきたかと思うと、微かに人影が見えた。


アパートの玄関前に車を停めて、洗車をしている人がいたのだ。