「あまり悩まない方がいいかもよ?きっとさくなら“言いたい!”って思った時に、普通に言えちゃうんじゃないかなぁ?」


梢の優しい口調で、どんどん心が癒されていくのを感じていた。


こうして電話をかけてくれたのは梢だけれど、きっと瑞穂も梢と同じように、今も私が悩んでいる事を察しているだろう。

この2人は、いつもそうだった。


「そうかなぁ?」

「うん、さくっていつも“思い立ったら吉日”って感じで、やる時には勢いがあるから。」

「ははっ、確かにそうかも。」


思い返せばいつもそうだった。


やる時には“心の瞬発力”のようなものがあって、結果なんて恐れていなかった気がする。


自分の気持ちを高めるかのように、私は傍にあったもう一つのクッションを、ボフッと叩いた。


「だからあまり悩まないで、流れに任せてみたらどうかなぁ?言いたくなったら言えばいいと、私は思うよ。」

「うん…梢、ありがとう。」


少しだけ悩んでいた事から開放された気がして、私がお礼を言うと


「ううん。」


そう言って、梢は照れ臭そうに笑った。



悩んでどうなるって訳じゃない。

要は、私の気持ち次第なのだ。

焦らなくても、


“今、言いたい”


そう思えた時に、自然に言えるような気がした。

その時まで、どんなに自分の気持ちが大きく膨らもうと、私は怖がらずに、そんな自分を受け入れよう…。


あっという間にこんな気持ちになれる私は本当に単純だと思う。


けれど、時にはそれで良いのかもしれない。


前向きな気持ちになれるなら―…


「本当に心配してくれてありがとね。気持ちが楽になったみたい。焦ったり悩んだりしないで、その時が来るのを待つよ。」


私はもう一度、照れ臭そうに笑う梢にお礼を言った。



『梢、ありがとう。瑞穂も私の背中を押してくれてありがとう。』



そんな想いでいっぱいの私は、

先生に気持ちを伝える日がそう遠い未来ではない事に

この時はまだ気付いていなかったんだ―…