海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

諦めようとしていたのは私の方だった。


何も言わずに去る事が一番良いのだと、

そう、自分を納得させて諦めようとしていたのは私だったんだ。


こうして相葉先生が言ってくれなかったら、

本当にこれっきりで終わっていたんだ―…



「すごく…嬉しいに…決まってるじゃないですか…。」


私は何度もしゃくりあげながら、相葉先生の背中に回した腕にしっかりと力を込めて抱き締めていた。



「…許してくれるのか…?」

泣きじゃくる私の頭を撫でながら、相葉先生が問い掛けた。


私はこうして頭を撫でられるのが好きだった。

温かなその手は、やっぱり今でも心地良くて、更に涙を溢れさせた。



「許すだなんて…嬉しいんです…私だって…私だって、先生の事が好きだから…。」


「河原、そんなに泣かないでくれよ…。」


泣きじゃくる私に困りながら、相葉先生は片手で私の頭を撫で続け、そしてもう片方の腕を私の背中に回して抱き締めてくれた。


ようやく想いが通じ合った事も、


先生の温もりが体中に伝わってきた事も、


その全部が嬉しくて涙を止められなかった。



「先生が大好きです、すごく、すごく…うぅ…」


「な?頼むから…。」


更に激しく泣き続ける私の頬を、両手で包み込むようにして涙を拭うと、



「ほら、せっかくの化粧が台無しになっちゃうぞ。」

優しい笑顔のまま、そんな意地悪を言うものだから、



「だって相葉先生が…」


そう言いかけた私の唇を、相葉先生の唇が塞いだ。


私の両頬を包むようにしていた相葉先生の手は、片方の手を私の頭の後ろに、そしてもう片方の腕を腰に回して、しっかりと抱き締めるようにキスをしてくれた。


私の卒業式以来の相葉先生とのキスは、偶然にもまた同じ場所。


だけどその時と違うのは、想いが一方通行なんかじゃなくて、


お互いがすごく、すごく、愛しくて。


あなたの温もりを感じる事が出来る、そんなキスだった―…