海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

母校での最終日は、朝から色んな先生から


「河原先生、今日で最後ですよね。」

と声を掛けられた。


もちろん相葉先生からも、


「とうとう最後だな。」

そう言われて、


「はい、本当にお世話になりました。今日一日、精一杯頑張ります。」

と、私は笑顔で答えた。


本当は少しだけ切ない気持ちになっていたけれど、


誰にも気付かれないように、その想いをぐっと堪えて胸にしまっておく事にした。



そして授業の度に、


「今日で皆さんの授業を担当するのも最後になります。明日からも頑張って下さいね!」


そんな挨拶をして終えていった。


職業訓練の時もそうだけど、こうして長期の講習が終わり、生徒さん達の前に立つ事も、一緒に練習していく事もないのだと思うと、とても寂しい気持ちになった。


いつだって別れは寂しくて。

だけど、何らかの成果があった時の別れは、寂しさの反面、ちょっとした達成感や期待感が感じられた。


今回の講習もそうだった。


寂しいけれど、

“生徒さん達にはこれから明るい未来が待っている”

という期待を持てた。


きっと私はこれからも、この気持ちの繰り返しになるはずで、


いつか別れに慣れてしまう日が来るのかもしれないけれど、


寂しさも、達成感も、期待もする気持ちもあるという事だけは忘れたくないと思っていた。



けれど―…

この寂しさは、相葉先生とお別れする事の寂しさとは、また少し違うものだった。