「さてと…。」


私はパソコン教室の準備室にある自分の席に座り、背もたれにもたれかかった。


目の前に広がるのは、ブラインド越しに見える外の景色。


私はこの場所から、空や光を受けて輝く木々を眺めるのが好きだった。



母校での講習もそろそろ2ヶ月目が終わろうとしている頃―…


私は昼休みになると、必ずと言っていい程パソコン教室の準備室に来るようになっていた。


昼食は職員室で取り、食後は準備室に行くというのがもっぱらの生活リズム。

そして、こうして自分の席に座り、ぼんやりと外を眺めていたりする。


常に沢山の人に囲まれているからだろうか。

こうして一人になる時間が有ると、とっても気分を落ち着かせる事ができた。


楽になれるというのか、とにかく、リラックス出来たのには間違いがない。


たまに生徒さん達が来る事もあるけれど、それはそれで楽しい時間になった。


生徒さん達と、授業中には話せないような事をお喋り出来る時間があるというのも、コミュニケーションを取る上では良い事だと思っていたからだ。


そんな風に過ごしてきた時間はあっという間だった。


今までとは違って土日が休みになっていたし、

この学校で過ごす1週間が、今までよりも早く過ぎていくように感じたとしても、不思議では無いのかもしれない。


とにかく毎日が早く過ぎていく分、


『相葉先生と一緒に過ごす日々もすぐに終わるんだ』


そう思うと寂しく感じたけれど、

そんな時には必ず、


『元の生活に戻るだけだ』

と、自分を戒めた。


もう傷つきたくないのだから、この期間が終わったら、ごく自然な流れで離れていくのが一番良いのだ。



ややしばらく窓の外を眺めた後、バッグから携帯を取り出して、自分の会社から何か連絡が入っていないかを確認し始めた時、


コンコンというドアをノックする音と同時に準備室の扉が開いたので、私はそちらの方に視線を移した。