「返事はすぐじゃなくてもいいから。ちょっと考えてみて?」

「はい、分かりました。ありがとうございます。」


笑顔で見つめる椎名先生にお辞儀をし、


「失礼します。」


と、私はその場を立ち去った。



一人で歩く帰り道、


『私にパソコンを教える事なんて出来るだろうか。』


という不安を多少感じていたけれど、

それでも、

声をかけてもらえた事がとても、とても嬉しくて、何度も頬が緩みそうになった。




帰宅後、すぐに電話で母に報告し、仕事から戻ってきた大和にも話した。


「いいんじゃない?」

「良かったね!」


二人がそうやって応援してくれた事で、私の決心はしっかりと固まっていった。




数日後の放課後―…



帰る前に立ち寄った職員室で、


「本当に私で良ければ、どうぞ宜しくお願いします。」


そう、椎名先生に伝えた。



「やった!あなたなら大丈夫よ!どんな人も努力していけば一人前になれるんだから。頑張りましょうね!」


そんな椎名先生の嬉しそうな言葉と励ましに、


「はい、頑張ります。宜しくお願いします。」


と、私は前向きな気持ちで答えた。



せっかくのチャンスを無駄にはしたくないと、

精一杯やってみようと、心から思ったんだ。




それに、心の中では相葉先生を思い浮かべていた。


相葉先生は私の心の中からずっと消える事が無かった存在だった。



『相葉先生、私は先生と同じ道に進みます。』



心の中で呟いた言葉は決して届く事がないけれど、それでも報告せずにはいられなかった。


私は無意識の内に、相葉先生の背中を追いかけていたのかもしれない。


もう二度と見ることの出来ない、


相葉先生の背中を―…