「そうだなぁ…。」


それっきり、大和の言葉は続かなかった。


無言になってしまった間に耐えられず、


「ごめんね。疲れただろうし、ゆっくり寝て体を休めた方がいいよ。また明日ね。」


私はいつもと変わらない素振りで話を終わらせると、


「おやすみ。」


そう言って電話を切った。




『大和に着いていけるなら、着いていきたい。』


そう、思っていた。


彼を好きだと想う気持ち。


大和と離れたくないっていう気持ち。


その気持ちは間違いなく胸にあるけれど、


本当はそれだけではなくて、


『この街にいる限り、相葉先生に会ってしまうかもしれない。』


そう思いながら生活する事に疲れ始めていた事も理由の一つだった。



特に出掛けている時は、


『もし相葉先生がいたらどうしよう。』


そんな不安がいつも心のどこかにあった。



相葉先生に会う事は、今はまだ出来ない。


自信を持って会える自分じゃないし、どんな顔をして会えばいいのかも分からない。



それに、私が大和と一緒にいる姿はもっと見られたくなかった。


『案外簡単に他の男を見つけたんだな。』


そんな風に思われたくなかったから。


全然簡単じゃなかった分その想いは強くて、


『大和に着いていけたら、もうそんな事を考えなくても済むのに…。』


そんな気持ちが私の心の中にあった。