「うん、大和帰ってきたの?」

「さっき帰ってきた。連絡が遅くなってごめんな?」

「ううん、疲れたでしょう?」

「少しね。だけど試験が終わってほっとしてる。」


疲労困憊のはずなのに、大和は私を気遣ってくれた。


いつも大和はそうだった。


私の事を一番に考えてくれていた。


優しい彼だったからこそ、私も優しくなれるのだと思う。


見返りを求めているわけでも、求められているわけでもないけれど、


優しくしてくれる相手には、優しくしてあげたいって思うのは当然の事だと思う。



「お疲れ様。」

「ありがとう。」


試験が終わった安堵からか、大和の小さな笑い声が聞こえた。



大和の話を聞いている限りでは、試験はうまくいったらしい。


面接時の様子を聞いていて、私も嬉しくなった程だ。




大和には好きな仕事をしてほしい。


頑張ってほしい。


心から、そう思ってる。



だけど、気になるんだよ…。


本当はすごく気になってるんだ。


ずっと聞けなかった事。


私達の“これから”の事を大和がどう思っているのか…


この時も、ずっと気になっていたんだ―…




「ねぇ、大和。」

「うん?」

「もしも採用になったら、私達、遠距離になっちゃうね…。」


私はこの時初めて、自分が不安に感じている事を口にした。



「うん…それは俺も考えてた。」


声音から、本当に彼も考えていた事が伝わってくる。


同じ事を大和も気にかけていてくれたのだと思うと、とても嬉しかった。



「今までみたいにはいかなくなるね。大和のお仕事は休みが決まってないし…。」


大和が選んだ仕事は、接客業だけに週末が休みとは限らない。


むしろ、土日っていう曜日は仕事になる場合の方が多い。


住んでいる場所の距離の問題に追い討ちをかけるように、すれ違いになってしまうのは間違いないだろう。