海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「大和、明日は何時頃帰ってくる?」


大学4年生になった大和は、卒業に向けた活動でとても忙しそうだった。


前日の夜の内に翌日の予定を聞く事もしばしば。


全く今までのようにはいかなくなった。



「明日はいつもより遅いかもしれない。」


そう言った大和の表情からは、少しだけ疲れを感じた。



「バイト?」


私の問いに、大和は顔を左右に振った。



「就職活動。応募する会社を探さなくちゃいけないから。」


大学4年生になった彼は、就職活動と卒業論文に追い込まれていた。


特に就職に関して、最近の大和はずっと悩んでいた。


卒業後どんな仕事をしたいのかを模索しているようだった。


大学の先生からは「早くどこか見つけろ」と煽られるし、


友達の中には就職先が決まった人が少しずつ出てきたらしい。


なのに“やってみたい!”と思える仕事がなかなか見つからない。


自分だけが置いてけぼりになっているような気持ちから湧き起こる、焦りや不安でイライラしているのが見ていても分かる程。


その気持ちは私も経験した分、理解してあげられる気がした。




『そんな大和の為に、私が出来る事はなんだろう。』


そう考えてみるけれど、どうしていいのか分からない。


そっと見守る事しか出来ない自分が歯痒かった。




「そっか。じゃあ、ご飯だけ作っておくね。」

「ありがとう…。」


大和がキラキラした笑顔を失っている事はとても悲しくて、


『働きたいと思える会社が早く見つかったらいいのに。』


そう思うようになってから、


2ヶ月程経った頃だった。