海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「あのさ…。」


運転席側の窓から星空を見上げたまま、彼は口を開いた。



「早いかもしれないけれど、俺と付き合って欲しい…。」

「えっ?」


出会ったその日にそんな言葉を聞くなんて、思ってもいなかった私は、



「私でいいの…?」


あまりの驚きで、もう一度聞き返した。



「さくちゃんがいい。」


そう言った彼は、相変わらず窓の外を眺めたままだ。


だけどその表情は真剣で、外を眺めているのも無関心だからではなく、恥ずかしさで視線を逸らしているって事がちゃんと伝わっていた。


もちろん、大和君への私の答えは決まっていた。




「…よろしくお願いします…。」


私の返事を聞いた途端、



「本当に!?俺でいいの!?」


彼はガバッと勢い良く起き上がると、助手席にいる私を見下ろして微かな笑顔を浮かべて驚いている。


「うん、私でいいなら。」

「嬉しい!信じられない!」


そう言って喜ぶ彼の表情は、みるみる内に満開の笑顔になっていく。


彼に出会った時から、私はこの笑顔に惹かれていたんだ。



それから、


「よろしくね。」


お互いに照れ笑いをしながらそう言うと、また無言でシートに横たわり、星空を眺めた。



嬉しくて、信じられなくて。

ドキドキしながら星空を眺めていた。



「こんな風に思える人に、まさか今日出会えるなんて思わなかった。」


星空を眺めたまま呟いた彼の言葉は私にとっても同じで、


「私も。」

そう一言だけ、私も呟いた。



流れていた音楽は止まっていて、お互いの呼吸が聞こえそうな程、車内は静まり返っていた。