海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

冬の空気は澄んでいて、停まっている車もなく、光も少ない場所だったせいか、夜空に浮かぶ沢山の星がいつも以上に瞬いている。


上質なベルベットの夜空に、無数のスワロフスキー。


今の私にはいつもと同じはずの夜空も、こんな風に見えた。



車内から星を眺めながら、さっきまでのドライブの時の事や、お互いの話をして過ごす時間は本当にあっという間で、


気付けば時刻は深夜1時半を回っていたけれど、それでもまだ帰りたいと思わなかった。


彼の明るさと、まっすぐに私に向けられる優しさが心地良くって、

もっと一緒にいたいと思っていた。


こんな風に思えたのは相葉先生以外では初めてで、


『もしかしたら、もう彼の事を好きになったのかもしれない。』


そう、感じていた。



相葉先生を想っていた頃は、あんなに諦めたくて、新しい恋がしたくて、必死にもがいていたのに。


『あの時間は何だったのだろう』と思う程、今こんなに私の心は新しい恋に向かおうとしている。




その気持ちは相葉先生に対する裏切りのように思えて、少しの迷いがあったのは確かだけど、



相葉先生の事を考えてはいけないと思った。


もう、全て終わったのだから。


どうしようもないのだから。


時の流れに、


運命の流れに、


今の自分の気持ちに、


全てを任せようと思った。



彼とは出会うべくして出会ったのだと

そう、思いたかった―…




ガタッ


物音がしたので運転席にいる大和君を見てみると、彼はシートを倒して運転席側の窓から星空を見上げていた。


私の視線に気付いた彼は、


「こうした方がもっと良く見えるよ。倒してもいいよ。」

と、言った。


彼の言葉にドキッとしたけれど、その笑顔があまりにも無邪気だったから、


「うん。」


そう言って、勧められるがままにシートを倒すと、彼が言う通り、こうした方が星は良く見えるし、首も疲れなかった。


そのままの状態で、私達は殆ど無言になっていた。