海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

私の様子に気付いた隆二さんはその子に向かって、


「俺の車でもいいかな?それとも、他に乗りたい車ある?」


と、問い掛ける。


「いや別に…。隆二さんの車に乗せて下さい。」


そう、彼女が快諾したことで、


「じゃ、決まりね!」

「さく、頑張って!」


そんな風に隆二さんと瑞穂に送り出された私は、


「えっ?あっ、うん、ありがとう。行ってくる…。」


そんな戸惑いを感じながら、柴田君が待つ車の方へと歩き出した。


1歩、また1歩と柴田君に近付く度に、心臓の音が大きく高鳴っていく事も、足が痛くなるような緊張感も感じていた。



ドキドキしながら柴田君の車の助手席に辿り着くと、窓越しに柴田君と目が合った。


笑顔で会釈しているのが見えて、私も同じように会釈で返す。


それから、思い切って車のドアを開けた。


「あの…なんか、すみません。こんな事になっちゃって…。」

「あ、いいんです全然!ボロい車ですけど、どうぞ!」


照れ笑いをしながら謝る私に、同じような照れ笑いで明るく柴田君が迎えてくれた。


「じゃあ、お邪魔します。」

「どうぞ。」


お互いに照れ笑いが止まらない状態で車のドアを閉めた。


出会ったばかりの男の子と二人きりで車に乗るなんて、初めての出来事だった。




全員が車に乗り込み、3台の車は再び夜の海岸線を走り出した。


最初にジンくん、次が隆二さん、最後に柴田君。


目の前を走る隆二さんとジンくんの車が視界に入るけれど、


どこを走ってるとか、どこに向かってるとか、そんな事を考えている余裕は私には全然無かった。