海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「柴田君?」

「え!?柴田!?」


前にいたカズ君と隆二さんまでもが、瑞穂と声を揃えて驚いている。



『言わない方が良かったかも…。』


3人の反応を見て、私は少しだけ後悔したけれど、



「さっきチラッと見た感じでは優しそうな人だったよねー。」


と、瑞穂の笑顔が途切れる事はなかった。



「それに、アイツ結構面白いよ。なぁ、カズ。」

「うん。」


前に座る二人の話を聞きながら、


「そうなんですか…。」


と、軽い後悔で言葉少なになっていた私は、


「とりあえず、さくちゃんは柴田ね!分かった!」


そう、隆二さんにダメ押しされた恥ずかしさで、ますます顔が熱くなった。




それから数分後、コンビニに到着した私達は、


「飲み物買ってくるけど車で待ってる?一緒に降りてもいいけど。」


と、隆二さんに聞かれて、


「じゃあ、車で待ってます。」


そう、私達が答えると、隆二さんとカズくんは他の男の子達と一緒にぞろぞろと中に入っていった。


その様子を車内から見送っていると、


「さく、柴田君みたいな感じが好きなんだ?」


と、瑞穂がいたずらっぽく私に聞いてきた。


「うーん、割と好きかも。何かね、話してみたいなって思ったの。」


満面の笑顔で答えた私に、瑞穂が「ふーん。」と満足そうな返事をした。


きっと瑞穂からすると、この時のような私が珍しかっただろう。


自分でも思う。


相葉先生が結婚した後では尚更だったから。



「カッコ良くない?」


そんな私の質問に、


「んー…まぁまぁかな。」


少しだけ考えながら答えた瑞穂は、柴田君には全く興味が無さそうで、そんな瑞穂の様子に私は心の底から安心していた。


男絡みの揉め事が起きるなんて、もう沢山だ。


それに、もしもまた男絡みの揉め事が起きて、揉めた相手が大親友の瑞穂だったら、今度こそ私は立ち直れない気がした。