海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

部屋の前に着いた瑞穂はドアに書かれている号室を確認し、建物の右側にある集合ポストに移動した。


それからもう一度玄関前に行き、玄関ドアに付いている郵便受けを軽く指で押して、中を確認している。



その行動を見た瞬間、私は車内で「えっ!!」と叫んでいた。


『室内にいる住人と、青山先生に見つかってしまうんじゃないか。』


そんな、ハラハラした気持ちだったからだ。



さすがに瑞穂もドキドキしたのだろう。


はにかんだような笑顔を浮かべて、慌てて戻ってきた。



車に乗り込み、急いでドアを閉めた瑞穂に、


「ちょっと!ビックリした!」


そう言うと、瑞穂は私以上に興奮した様子で、


「だって、確認したいじゃん!」


と、息を切らしながら答えた。



「で…どうだった?」


私の問い掛けに、


「うん…。」


瑞穂は少しだけ間を置くと、


「…青山先生って、白い靴履いてたよね?」


そう言って、こちらを見つめた。


「うん、白い靴履いてる。」


私は返事をしながら頷いた。


青山先生がいつも白っぽい革靴を履いていた事をよく覚えていたから、迷いはなかった。



「玄関に白い靴があったの。やっぱりさっき部屋に入った人は青山先生なんだと思う。」


瑞穂はそう言った。


こうして尾行した事で、青山先生が普段からこの場所に来ているという事が想像出来た。



「でね…。」


口ごもってなかなか続きを言わない瑞穂に、


「大丈夫だから、ちゃんと言って。」


そう言った私を、瑞穂はじっと見つめた。


言うべきか言わないべきか、その迷いで瞳が左右に揺れている。