海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

着かず、離れずで追いかけている内に青山先生は住宅街に入ってしまい、とうとう後ろに続く車は私達だけになってしまった。


後ろから着いてくる車に乗っているのが私だという事が気付かれないように、速度を落として車間距離を開けると、前方で青山先生が右折した。


後に続く私達は、わざとその曲がり角を通り過ぎた。


曲がり角の方を見てみると、ひっそりとしたアパートが建っているだけ。


しかも青山先生が入ったその曲がり角は、垣根の隙間のような感じで、住人か近隣に住む人、もしくは通い慣れている人じゃないと、到底気付かないように思える程、狭くて目立たなかった。


「青山先生、ここに入ったよねぇ?」


私が呟いた言葉に助手席に座る瑞穂も、


「ここだったと思う…。」


そう、自信無さげに小さな声で答えた。


私達はその周辺をぐるりと一周してから、青山先生が入った狭い曲がり角を曲がり、アパートが建つ敷地内に入った。


入ってみると右側にアパートがあり、左側には原っぱが広がっている。


私達がその敷地内に入ったのとほぼ同時に、アパート1階の手前の部屋のドアが閉まったのが微かに見え、原っぱには青山先生の車が駐車されていた。


私はそろそろと青山先生の車の隣に駐車した。


青山先生が入っていったと思われるアパートの室内から、この場所が見える位置に窓が無かったので、


『先生が出てこない限り、私がいる事は分からないだろう。』


そう考えた私は、車のエンジンを止めた。



「さっきアパートに入ったの、青山先生だよね?」


私に問いかけながらも、心の中は確信に満ちているような瑞穂の言葉に、


「多分。」


そう答えた私も、同様な気持ちだった。


私の返事を聞いた後、瑞穂は突然ガチャリとシートベルトを外して車のドアを開けた。


「ちょっ…どうしたの!?」


外に出ようとする瑞穂を、驚きの眼差しで見つめると、


「ちょっと見てくる。」


瑞穂はそう言って車のドアを閉め、青山先生が入ったと思われる部屋の前に駆け寄った。