海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

青山先生が自動車学校を出て、1つめの信号を左に曲がると、私は他の車を3台程間に挟んで、青山先生の後に続いた。


「先生の家ってこっちなの?」


瑞穂の言葉に、


「ううん、違う。」


そう言って、私は首を横に振った。


青山先生の家は、自動車学校を出たら真っ直ぐ進むか、もしくは右に曲がる。


今向かっているのは全く逆方向だった。



『もしかしたら、彼女の家に行くのかもしれない。』


そんな、不安にも近いドキドキ感が私には有ったのだけど、



「先生、どこに行くんだろうね!」


そう言って笑っている瑞穂は、私とは違って楽しんでいるように見えた。


きっと、


『青山先生はコンビニかレンタルビデオ店にでも行くんだ。だから、そこの駐車場で「偶然!」って感じで声をかけよう!』


…とか、ちょっとしたイタズラ気分になっているに違いない。




そんな事を考えながら、青山先生にみつからない距離感を保って走っていると、先生は赤信号で止まった。


私も同じように、車3台程後ろの辺りで停車した。



「なんか、尾行してるみたいだよね。」


そう言ってニヤニヤしている瑞穂と、同じ事を私も思っていた。


「探偵ごっこだね。」


私は瑞穂にそう答えた。


“これから知る事は、自分にとって悪い事かもしれない”


そんな不安を抱えながらも、いつの間にかこの状況を楽しむ心の余裕が出来ていた。


“怖いもの見たさ”


この言葉が一番よく当てはまる気がする。



信号が青になり、青山先生の車が進むと私達も前の車に合わせて進んだ。


何軒かのコンビニとレンタルビデオ店を通り過ぎ、私達にはどこに向かって走っているのか予測がつかない状況だった。


青山先生に、私達がいる事を気付かれない事を願いながら走り続けた。