海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

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青山先生に会った日から1週間程経った頃、私は瑞穂と会う約束をしていた。


行き先は自動車学校。


瑞穂には青山先生と時々会っている事を話していたけれど、ホテルに誘われた事だけは言えなくて、


「この前青山先生に会ったんだけど、次の約束が出来なかったから自動車学校まで付き合って欲しい。」


瑞穂にはそう言ってお願いした。



「うん、いいよ。」


瑞穂は当然のように了解してくれて、私は内心、“青山先生と何かあったのか”と追求されなくてホッとしていた。



いつものように瑞穂を迎えに行き、そのまま青山先生の仕事が終わる頃を見計らって、自動車学校へと向かった。


学校に到着すると駐車場には沢山の車が停まっていたけれど、学校の建物から一番遠くて目立たなさそうな場所が空いていたので、私はそこに車を停めた。


少し先では、教習を終えて学校に戻ってきた教習車と先生、生徒達が、建物の入り口辺りでウジャウジャしている。



「先生、いるかな。」


瑞穂は人だかりの中に紛れているかもしれない青山先生の姿を、ニコニコしながら探している。


隣にいる私には、その表情がとても楽しげに見えた。



私も瑞穂と同様に青山先生の姿を探していたけれど、青山先生に会う事は、少しだけ複雑な気持ちにさせていた。


“ホテルに入る事を拒んだ”


それだけで、十分過ぎる位気まずかったから。



「あ、あれ!青山先生じゃない?」


瑞穂がそう言って指を差した先には、自分の車に乗って駐車場から出てきたばかりの青山先生の姿があった。


青山先生は私達に気付くことも無く、そのまま敷地内を通って帰ろうとしている。



「青山先生、帰っちゃうよ!?」


そう言って、慌てた瑞穂の言葉とほぼ同時に、私は車のシフトをドライブに入れた。


「追いかけよう!」


私は車をバックさせると、青山先生が向かった方向に車を走らせた。