海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

車内に変な空気を漂わせたまま車は走り続け、


ようやく私の車が停めてある、青山先生の自宅近くの施設の駐車場に到着した。


到着してすぐに、


「じゃあまた…。おやすみなさい。」


そう言って、ペコリと会釈をしてから青山先生の車を降りると、



「ん、おやすみ。」


と、車のドアを閉める前に青山先生が言った。


青山先生は私が自分の車に乗り込むと、サッと片手を上げて“じゃあ”と合図をし、私よりも先に走り出して、すぐに見えなくなった。



「…あっ!」


一人ぼっちの車内で声を上げた私は、青山先生が見えなくなってすぐに、青山先生と次の会う約束をしていない事に気付いた。




つい先程、私はあんなに相葉先生の事を思い浮かべたのに、


それでもまだ、


『青山先生を好きになって、相葉先生の事は諦められる』


と、自分の本心から目を逸らし続けていた―…





『もしかしたら、まだ家の外に青山先生がいるかもしれない。』


私は慌てて車を発進させると、駐車場の少し先にある青山先生の自宅前まで行ってみた。



「あれっ…?」


行ってみると、青山先生の車が駐車されるであろう、自宅前の敷地はがらんとしている。


時計を見ると、時刻は既に23時30分を回っていた。


時間が時間なだけに、


『どこに行ったんだろう。』


という疑問が浮かんだ。



思い返せば、今までにもこういう事が何度もあった。


しかもそういう時は決まって、


「夕飯はいいや。」


と、仕事が終わってお腹がペコペコなはずなのに、何も食べずに一緒に出掛けていた事まで思い出した。


そういう時の時間なんかも定期的だったような気さえするのは、私の記憶の中で起きた“こじ付け”だったのかもしれないけれど、


『青山先生は、いつもどこかに行ってるのかもしれない。』


という疑問は、



『本当は、きちんと付き合っている人がいるのかもしれない。』


という、疑惑に変わっていた。