海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

暗く、特に見所が無いような道を、リズミカルな音楽をバックにして他愛も無いお喋りをしながら走り続ける内に、


車は山道のような場所に入り、坂を登り始めた。


「ここ、確か夜景が見えるんだぞ。」


「そうなの?」


青山先生の言葉に期待しながら、


木が鬱蒼と繁っている登り坂を走り抜けると、眼下に夜景が広がった。


「わぁ…。」


私は、その眩い景色に感嘆の言葉を漏らした。


『この田舎のどこに、こんなに沢山の光があったのだろう。』


そんな風に不思議に思っていた。



ふと見ると、敷地内の離れた場所には車が2台程停まっている。


どうやら先客がいたらしい。



「やっぱり同じ場所を知ってる人がいたかぁ。」


青山先生は悔しそうに呟くと、他の2台からは少し離れた場所に車を停めた。




私達は夜景を見ながら、昔好きだったアーティストの話や、学生の頃の話をした。


その時に、学生時代の青山先生が少しだけ“やんちゃ”だった事を聞いた。


今の青山先生からは想像もつかないような“悪さ”の話を聞いて、ビックリしながらも笑ってしまった。


聞きながら、


『きっと、その頃もモテてたんだろうな。』


と、心の中で思っていた。




あちこち走り回っている内にこの場所に辿り着いたので、時計を見ると22時を回っていた。



「そろそろ行くか。」


同じように時計を見た青山先生が、そう言った。



青山先生と会った日は、0時を過ぎて帰宅した事は一度もない。


私には特に門限なんて無かったけれど、その日の内に帰宅するようにしていたのは、


まだ十代で親元に住んでいる私への、青山先生なりの配慮だと思っていた。