海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「だからさく、一人で行きなよ。で、ちゃんと次の約束もしておいで!」


「えー!突き放さないでよぉ。」

そんな私の願いも空しく、


「だめ!さく一人で行きなさい。」

瑞穂はきっぱりと断った。


「やだー!何話せばいいか分かんないもん!じゃあ私も行かない!」

ゴネる私の言葉なんて打ち消すかのように、


「だってね、青山先生は来ると思って待ってるんだよ?すっぽかすの?それはだめでしょ。」


と、瑞穂の言う事はごもっともだった。



「そうかもしれないけど、瑞穂も一緒に行ってよぉ…。」


「だってこのままじゃ、さくの為にならないもん。一人で行ってきて!」


「えー…。」


「ひどい事してるかもしれないけど、頑張って!ねっ?」


「…分かった…。」


結局、私は瑞穂の言う事に頷くしかなかった。


青山先生を待ちぼうけにさせる訳にはいかないし、


瑞穂の言う事も分かる気がするし…


頑張るしかないかなって思ったんだ…。



瑞穂との電話を切った後、急に不安になった私は、

自分の姿を鏡に映しておかしな所はないか、お化粧や、髪型、服装を入念にチェックした。


落ち着こうと思っても、心臓は既にバクバクしている。


何回鏡を見ても、“良し”と思えない自分がいた。


そんな事をしながらふと時計を見ると、既に自動車学校に行かなければならない時間になっていた。


私は上着を羽織ってバッグを掴むと、


「もう、仕方がない!」


半ば開き直ったように部屋を出て、リビングにいる母に、


「行ってきます!」

そう言って、家を出た。