海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

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それから数日後、青山先生と約束していた日がやってきた。


瑞穂と青山先生と3人で食事をした時に約束した予定では、


まず私が瑞穂を迎えに行き、その後青山先生の仕事が終わる20時頃、自動車学校に行く予定になっていた。


私は支度を済ませ、


『あと10分位経ったら家を出よう。』

そう思いながら自分の部屋でのんびりしていると、



「さくー!」


階段の下から、母が私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「はーい!なぁにー?」

私は部屋のドアを開け、階段下を見下ろすように顔を出した。


「瑞穂ちゃんから電話よ。」

そんな母の言葉に、



『そろそろ迎えに行こうと思っていたんだけど…。』

そう思いながらも、



「分かったよー。」

と返事をして、自分の部屋にある電話の子機を取った。



「はい、もしもーし。」

「さく?私、瑞穂だけど。」

「うん、どうしたの?」


私はてっきり、


『ごめん、支度が間に合わないからあと10分位経ってから家を出て!』

とか、言われるものだと思っていた。



「ごめん!今日行けなくなっちゃった!」

「…」


私は瑞穂の言葉に絶句して言葉を失ったけれど、すぐに、


「えーっ!!なんでーっ!?」

と、絶叫した。


瑞穂は少しだけ笑いながら、


「行けなくなったっていうかさぁ…。」


そう言って少し間を置いてから、更に言葉を続けた。


「だってね、仲良くならなきゃいけないのはさくじゃん。このままだと私が青山先生と仲良くしたいと思ってるって勘違いされそうなんだもん。」


「えー…そうかもしれないけど…。」

瑞穂も一緒だと安心しきっていた私は、困惑の返事をした。


だけど、


『確かに瑞穂の言う通りかもしれない。』


内心そうも感じながら、予定外の展開に戸惑っていた私は、


電話を耳にあてたまま、その場を右往左往していた。