海に降る恋 〜先生と私のｷｾｷ〜

「楽しかったね。青山先生にご馳走になっちゃったね。」


車内で話し始めた瑞穂は、ニコニコと嬉しそうにしている。


「悪いことしたね。」

「全然そんなつもりじゃなかったのにね。でもお腹いっぱいだし、楽しかったから大満足！」

そう言って、瑞穂はお腹をさすりながら笑った。


「青山先生、いい人そうだよね。」

「うん、そうだね。」

私はまっすぐ前を見たまま、そう答えた。



「彼女いないって言ってたよね。」

「うん、ちょっと信じられないけどね。」

「ほんと、嘘っぽい！」


私と瑞穂の会話が続く中、車は赤信号で停車した。


「来週また会えるね。」


そんな瑞穂の言葉に、


「そうだねぇ、瑞穂が頑張ってくれたもんね。」

そう言って瑞穂の方をちらっと見ると、



「おせっかいな事して、ごめん。」

瑞穂はとても申し訳なさそうな顔を浮かべて、私を見ていた。


「ううん、私からは言えなかったから嬉しかったよ！どうもありがとう。」


慌てて私がそう答えると、瑞穂は安心したように


「良かった。」

と、言った。


そして、


「好きになれたらいいね。」

そう言ってくれた優しい表情の瑞穂に、


「うん、本当にありがとう…。」

そう答えながら、私も微笑みを浮かべた。



心の中では、瑞穂が私の為に一生懸命になってくれる事に感謝していた反面、


何度も青山先生に相葉先生を重ねて見ていた事を、申し訳なく思っていた。


瑞穂に申し訳なさ過ぎて、私はその事を言えずに心の中に留めた。



瑞穂の家の前に着き、


「送ってくれてありがとう。」

と、車を降りて手を振る瑞穂に、


「また来週ね！」

そう言って私は手を振り返して、瑞穂と別れた。


車の中で一人になった途端、私の頭の中では相葉先生と青山先生の事が交互に浮かんでいた。



『もう少ししたら相葉先生の事は忘れられるよね…？』


『その時には青山先生の事を好きになってるよね…？』


その思いが私の希望であり、心の支えになっていた。