海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「…だよねぇ、さく。」


「…えっ?」


瑞穂の問い掛けによって、ぼんやりと相葉先生の事を考えていた私は我に返った。

こんな時、我ながら“重症だな”と思う。



「だからぁ、青山先生、カラオケ好きなんだって。今度一緒に行きたくない!?」

瑞穂にそう言われて、


「あぁ、そうだね!」

と、本当はそれまでの話なんて殆ど耳に入っていなかったのに、私は瑞穂に合わせた。


「ねぇ、先生いつなら都合いいの?」

そんな瑞穂の質問に、青山先生はしばらく考えてから


「来週なら空いてるかな…。」

と、答えた。


その返事を聞くと、早速瑞穂は


「じゃあ、この日は?」

と、スケジュール帳を開いて青山先生と約束をしている。


私はその様子を見守っていた。



正直、恋愛感情から生まれる『また会いたい』という気持ちは、まだ湧き上がっていなかった。


ただ、好きになりたいから『また会いたい』と思っていた。


青山先生は話しやすくて楽しいし、このまま仲良くしていけばきっと好きになれるって思ったから。


もちろんカラオケの約束も、私の為に瑞穂が都合をつけてくれているのだと分かっていた。


きっと、『おせっかいかもしれない』と思いながら、やってくれているのだろう。


そんな瑞穂に私は感謝していた。



それからしばらくして、


「そろそろ行こうか。」


という青山先生の一言で席を立った。


お会計の時、私達はちゃんと自分の分を払おうと思っていたけれど、


「いいから。」

と、青山先生がご馳走してくれた。


「すみません、ご馳走様でした。」

私達がお礼を言うと、


「特別にお祝いな。」

そう言って、青山先生は笑った。