海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「ねぇ、ねぇ。先生ってどうして自動車学校の先生になったの?」

という瑞穂の質問に、


「大学を卒業した時に、親父の知り合いの紹介で入ったんだ。」

「へぇ。」


私も瑞穂と一緒に声を上げながら、青山先生の話を聞いた。


「本当は全然違う会社に就職する予定だったんだけど、この仕事がやりたくてギリギリのところで変えたんだ。」


そう言うと、青山先生はお水を一口飲んだ。


「二人は?これから何をするの?」


青山先生は、そう言って私の方を見た。

真っ直ぐな青山先生の視線に、少しだけ緊張した。



「私は就職しました。事務のお仕事です。」

「へぇ。榊さんは?」

「私は専門学校に通うの。」

「そっかぁ、学生かぁ。二人とも若いんだよなぁ。」


青山先生は背もたれによしかかり、すぐに自分と私達の歳の差を計算し始めた。


「…俺と10コも歳が離れてるんだもんなぁ。ほぼひと回りかぁ。俺なんてもう、おじさんだなぁ。」

そう言って笑う青山先生に、


「そんな事ないですよー!ねぇ?」

「うん!うん!」

と、私達はすぐに否定した。


「お兄さんみたいな感じだよねぇ。」

同意を求めるように私の方を見た瑞穂に、


「うん!そう思う。」

その思いに応えるように、私も頷いた。


「ははっ、それなら嬉しいな。」


青山先生が嬉しそうに笑った時、店員さんが飲み物を持ってやってきた。


グラスが私達の目の前に置かれると、


「じゃあ、二人の運転免許合格に乾杯。」

青山先生の一言に私と瑞穂は照れたように笑い、


「乾杯!」


3人のグラスをカチンとあてた。