海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「だから本当に違うんだって。」


そう言った時の、相葉先生の笑顔にさえ腹が立ってくる。




「嘘つき!」


多分、私は怒りに満ち溢れた表情だっただろう。


怒りの反面、先生を罵った自分の言葉で、自分自身も傷ついていた。



『なんでこんな事、言っちゃったんだろう。』

そう、思っていたから…。



私の目の前では、相葉先生が悲しい表情を浮かべたまま黙り込んでいる。




「帰る…。」


怒りや悲しみや後悔に耐え切れず、私はその言葉を最後にして準備室を出た。


相葉先生は最後まで何も言わずに出て行く私を見送り、


歩いている途中で、バタンとドアが閉まる音が背中越しに聞こえた。



私は足早にパソコン教室から校内の廊下へと出ると、


相葉先生から逃げるかのように早足で廊下を歩き続けた。




“簡単に嘘をつかれた事”

“それっぽっちの存在でしかなかった事”


私は自分が特別にはなれない事を痛感していたけれど、



『もしかしたら本当は、何か違う理由があったのかもしれない。』


と、自分にとって都合の良い事を願うような気持ちもあった。



そんなのは幻でしかないのだろうけれど、


それでも…


そうだったとしても…




「嘘つき!」


そう言った時の相葉先生の表情を、私は忘れる事なんて出来なかった。