海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

「先生…。」

「ん?」


相葉先生は口元に笑みを浮かべたまま私を見つめて、言葉の続きを待っている。



「先生…私が昨日の19時に先生の家に行くって言った事、覚えてる…?」

「…」

相葉先生は黙りこんだまま。

私は言葉を続けた。


「私、昨日行ったんだよ…?」

「…」

相葉先生は無言のまま、微かに動揺しているような表情を浮かべて、じっと私を見つめていた。



「先生、私が行く事忘れてた…?」

「いや…。」

そう言ったきり、相葉先生の言葉は続かない。



「私、約束していた時間より少し早かったけど、先生の家に行ったの…。」

「うん。」


相葉先生は私を見つめている。

私も先生から目を離さなかった。



「先生の家に行ったら、大崎先生の車が停まってた。」

「…」


相葉先生は何も言わず、ただ黙って私を見つめたままだった。



「先生の家に来てたんでしょう?」

「来てないよ。」


相葉先生の返事を聞いた途端、頭がカッと熱くなったような気がした。


「嘘!」

「来てないよ。」


「嘘つく必要ないでしょ!」

「…」


感情的になった私は、相葉先生の言葉によって、心の中がグチャグチャになっていった。



『相葉先生は嘘をついてる。
私は何度も先生のアパートの前に停められた大崎先生の車を見た。
この時だってハッキリとこの目で見たのに、どうしてこんなに分かりやすい嘘をつくんだろう。
どうして…?
どうしてこんな嘘を…!?』



私はもう完全に、自分の感情の波に飲み込まれていた…。