海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

次の日、私は憂鬱な気持ちを抱えたまま、昨日相葉先生に渡すはずだったケーキを持って登校した。


『ケーキなんて作るんじゃなかった。』


そんな後悔もしていた。


ちょっとしたチョコレートなら楽勝でカバンに入ったのに、


ケーキなんてガサばる物を作ってしまったものだから、ちっとも隠す事が出来なかったのだ。


「あれ?どうしたの、それ?」

と、昨日も持ち歩いていたケーキの箱がすっぽり納まるサイズのバッグを見て、不思議そうな顔をしていた友達に、


「いやー…。」

そんな曖昧な返事と苦笑いでごまかしながら、1日が始まった。


もしかしたら、


『受け取ってもらえなくて、みんなにと食べる為に持ってきたんだ。』


そんな風に思っていた人も、中にはいたのかもしれない。


色んな人に見られたせいで、


『放課後、なるべく人が少なくなってから渡さないとダメかも…。』


と、行動するべきタイミングを探す羽目になった。



そして放課後。


この日の掃除を済ませ、なるべく人が帰るまで瑞穂と梢に付き合ってもらい、教室でお喋りをしながら時間を潰していた。


「こうやって3人で話す事も残り少ないね。」


と、少しだけ寂しい気持ちになった。


当たり前の毎日がどんどん貴重な毎日へと変わっていくのを、日々感じていた。


瑞穂も梢も大切な友達だから―…



ある程度の時間が経ち、残っている生徒が少なくなった頃、


瑞穂と梢には校内のロビーで待っててもらい、私はパソコン教室に行ってみた。


相葉先生がいるっていう確信なんてなかったけれど、とにかく行ってみるしかなかった。