海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

夜の通りをしばらく歩いて気持ちが落ち着いた頃、


私は両親に迎えに来てもらって帰宅した。



いつもだったら自動車学校の送迎バスで帰ってくるのに、


「迎えに来て欲しい。」


と、電話をかけてきた私の事を、両親は不思議がっていた。



私は、


「今日、乗り遅れちゃったの。」


そう、嘘をついた。


いつものように夕飯を食べ、何事も無かったかのように両親と話し、お風呂に入ってから自分の部屋に戻ると、


帰宅してすぐに部屋に置いておいた、相葉先生に渡すはずのケーキのラッピングが嫌でも目についた。


「どうしよう…。」


ケーキから目を離し、溜め息をつきながらベッドに座った。


座った途端、あの雪の中で見た相葉先生のアパート前の光景が思い浮かんだ。


思い出した途端、切なさが胸に込み上げていた。



相葉先生は私が来る事など忘れていたのかもしれないし、


“大崎先生がいるんだよ”っていう事をアピールする事で、自分から私を遠ざけようとしたのかもしれない。



どちらともとれるだけに、どうしたらいいのか分からなかった。


私自身がどうしたいのかも分からない。


考えても考えても全然答えが出ないまま、たまらず瑞穂に電話をかけた。


「はい、もしもーし。」


いつも通りの瑞穂の様子が、不思議な程、私を安心させてくれる。


「あ、瑞穂?ごめん、今話しても大丈夫かな。」

「うん、全然大丈夫だよ。テレビ見てただけだから。そう言えば、相葉先生に渡したんでしょう?」


瑞穂はケーキの試作品も食べてるし、予定通り渡したんだと思っているのだろう。



「それが…渡せなかったの…。」

「えっ!なんで!?」


驚く瑞穂に、私はつい先程の出来事を話した。



約束していた時間の少し前に相葉先生の家に行った事。


アパートの前に大崎先生の車が停まっていた事。


そして、そのまま帰ってきてしまった事…。