海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

『早く先生に会いたい。』


車通りと人通りが少ない夜道だったせいか、不安な気持ちが込み上げてきて、私は自然と足早になった。


更にもう少し歩いて公園に辿り付くと、


雨の日に、傘をさした相葉先生が迎えに来てくれた電話ボックスが、明るく光を放って出迎えてくれた。


この公園の電話ボックスを見るだけで、あの雨の日の相葉先生を思い出してしまう。



『…何やってんだよ…。』


傘をさして立っていた相葉先生の、困ったような表情を思い浮かべて胸が熱くなった。


そもそもは、加奈子が“相葉先生の家に行った”っていう話を聞いて、嫉妬した事が始まりだった。


まさか自分も同じように相葉先生の家にお邪魔する事になるなんて、あの時は思ってもいなかったんだ。


私の頭の中では、その時の始まりから、全てがハッキリと思い出されていた。



その思い出の電話ボックスを通り過ぎ、相葉先生のアパートが少しずつ見えてきた。


先生の部屋の窓の灯りが、アパートに近付くにつれて少しずつ見えてきた。


『先生…。』


ドキドキしながら、荷物を持っていた手を強く握り直し、


曲がり角を曲がって、完全に相葉先生の部屋が見えた時、




「え…?」


私はピタリと足を止めた。


歩いていた時に死角になっていた位置にあったのは、大崎先生の車。


ここに停まっているという事は、相葉先生の家に来ている事を意味していた…。




私はしばしその場に立ち尽くした。


止む事のない大粒の雪が、静かに私の頭や肩、体全体に積もっていく。



そのまま相葉先生の家に行く事だって出来る。


そうすれば、全てに決着をつける事が出来るのかもしれない。


相葉先生と大崎先生の関係も。


私自身の気持ちも。