海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

もしかしたら相葉先生は、


『少し位、遠慮するべきだったかも。』


そう、思ったのかもしれない。



「だってバレンタインデーに渡したいし、今、自動車学校に通ってるから時間もちょうどいいんだもん。学校で渡せなかったら嫌だから。」


私は『少し強引かな。』と思いながらも、


更に「ねっ!?」と言って、押した。



自動車学校に通っているというのは事実だった。


私が通う自動車学校から、相葉先生が住むアパートまでの距離は本当に近くて、行くにはとても都合が良かったのだ。


「うーん…。」


相葉先生はしばし躊躇っていたけれど、私が「行く!」と言い張る事で、


「分かったよ。」

と、渋々了解してくれた。



相葉先生の返事を聞いて満足した私は、


「じゃあ、楽しみにしててね!おやすみなさい。」

「うん、おやすみ。」


そう言って、相葉先生との電話は終わった。


バレンタインデーまで、あと5日。


相葉先生の家に行くまでには、まだ十分時間があった。


私は先生に渡すケーキの試作品を作り、瑞穂や梢、他の友達に配ったり、


申し訳ないけれど父へのバレンタインデー用にする事にした。


父に渡した分を実際に食べたのは、母と妹だったりしたけれど。


「美味しいよ!」


より多くの人からその言葉が聞ければ、自信を持って渡す事が出来ると思った。