海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

終業式当日、


『相葉先生は、プレゼントしたネクタイを着けてくれるのかな。』


そう思うだけで、私は朝からドキドキしていた。




「昨日、渡したんでしょ?」


瑞穂と梢の問い掛けに、私が「うん」と答えると、



「使ってくれるといいね。」


そう言って、笑顔を見せてくれた二人に、私はもう一度「うん」と微笑みながら頷いた。



終業式の為に、全校生徒が体育館に集まる。


ぞろぞろとクラスごとに列になって体育館に入っていくと、壁伝いに並ぶ先生達の中で、相葉先生の姿を見つけた。


ドキドキしながらちらりと先生の襟元を見ると、私がプレゼントしたネクタイはなかった。




『気に入ってもらえなかったんだ…。』


そう思って、私はすぐに目を逸らした。


もしかしたら瑞穂と梢も、先生がネクタイを着けてくれていなかった事に気付いていたかもしれない。


私は着けてもらえなかった事がショックで、ぼーっとしながら校長先生の話を聞いていた。



私は『お返しが欲しい』とか、


特別な見返りを求めていたわけじゃなく、


せめて渡した次の日くらい、身に着けてくれるんじゃないかって…


その姿を見たいなって、少しだけ期待していただけなんだけど…


そんな期待自体が、大きな見返りだったのだろうか。


思っちゃいけなかったのかな…。



そんな事をぼんやりと考えている内に終業式は終わり、


体育館を出る時にもう一度相葉先生の姿を確認したけれど、やっぱり襟元にあったのは、普段からよく身に着けているネクタイだった。




終業式が終わった後、先生のネクタイについて瑞穂も梢も何も言わなかった。


多分、私と同じように気付いて、私の気持ちを察してくれている事が私にも分かるから、私は至っていつも通りに、明るく振舞った。