海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

お互いに微笑んだまま、沈黙を迎えた。


私は、もたなくなりそうな間を埋めるように、慌てて質問をした。


「先生、誕生日は何してたの?」




質問が口から出た途端に、


『どうしてこんな質問をしてしまったのだろう…。』


そう思って後悔した。


動揺している時程、何をするか分からないから怖い。




「いやー…特別な事はしてないよ。」



その言葉に、


『だって留守だったじゃん…。』


心の中で呟いたその想いは、決して口にしなかった。




「そっかぁ。」


私は何にも知らないような素振りで返事をし、


「ねぇ先生、簿記の検定の結果っていつ頃出るの?」


と、12月に入ってから受験した簿記検定の結果の事を訊ねると、



「うーん、1月中じゃないかな。」


相葉先生は、カレンダーを見ながらそう答えた。



「落ちてたらどうしよう。」

「河原なら大丈夫だろう。今まで出来てたし!」


そう言って、いつものように頭をポンと撫でられる。



相葉先生の手。


温かい手。


私の大好きな手…。


胸をキューッと締めつけられるような、甘い苦しさを感じた。



『こうして頭を撫でられる事は、あと何回あるのかな…。』


私は、どうしても自分の卒業式を意識せずにはいられなかった。




『もう残り3ヶ月も無いんだ…。』


少しでもそう思うと、どんどん暗い気持ちになってしまいそうだった。


私はこの事を頭から掻き消すように、



「じゃあ楽しみに待ってよっと。明日は終業式だからまたしばらく先生ともお別れだね。」


そう言って、少しだけおどけてみせた。