「じゃあ、隣の部屋で着替えておいで。」

「ありがとうございます…。」


相葉先生が案内してくれた隣の部屋にお礼を言ってから入ると、先生は軽く微笑んでから戸を閉めた。


戸が閉まってから振り返って室内を見てみると、着替える為に入ったこの部屋にはベッドとスーツがかけてあるハンガーが置いてあった。


多分、タオルやジャージは備え付けの収納から出してくれていたのだろう。


私は先生から借りたジャージとTシャツに着替えた。


相葉先生のジャージは大きくて、パンツの裾を何回か折り曲げた。


Tシャツもジャージの上も大きくて、少しブカブカしていたけれど、相葉先生に包まれている気がして私は微かな幸せを感じていた。


数分後、着替え終った私は制服を持って相葉先生がいる部屋の方を覗いてみると、キッチンにいた先生が振り返り、


「河原、コーヒー飲むか?」

そう言って、にっこりと笑った。


「いただきます…。」

私が遠慮なく頷くと、相葉先生は嬉しそうに


「砂糖とミルクは?」

「いらないです。」

「おっ。大人だなぁ!」


そう言って笑いながら、コーヒーメーカーで落としたコーヒーをカップに注いでいる。


『子供扱いなんだなぁ…。』


そう思ったけれど、実際、相葉先生と私の年齢差は12歳。


幼くて当然なんだけど、少しでも早く相葉先生に近付きたいと思っていた。


じゃなきゃ、大崎先生に敵いっこないっていう焦りがあったからだ。


絶対に埋められない時間があるのは仕方が無い事なのに、近付かなくちゃいけないような気さえしていた。