失礼にならない程度に、室内をキョロキョロと見回していた私に、相葉先生は隣の部屋から持ってきたタオルを私に差し出した。


「これ、使いな。」

「ありがとうございます…。」


私はそれを受け取ると、二つに結んであった髪をほどいて拭いた。


「制服どうしようか。そのままじゃ寒いよな。」


相葉先生は、うーん…と唸りながら考えている。


雨に濡れて寒いけれど、乾かそうにもストーブを使うような季節ではなかったし、私が住んでいる地域では乾燥機は一般的ではないから、当然、先生の家にある訳がなかった。


あちこち濡らしてしまいそうで、このままでは座る事も出来ないような状態の自分に、私の心は落ち着く事が出来なかった。


「一回洗濯機で脱水してから、アイロンでもかけるか。」


そう言って、また隣の部屋へと消えていった相葉先生は、Tシャツとジャージを持ってくると、


「はい、これ貸してあげるから。着替えな?」

当たり前のように私に手渡した。


「えっ!?」

驚きの表情で相葉先生の顔を見上げた私は、


『ここで着替えるの!?』

そう思っただけで、クラクラと目が回りそうだった。


相葉先生はフフッと笑いながら私を見つめる。


「だって、脱水かけるんだぞ?まさか裸でいる訳にいかないだろう?」

「…それはやだっ!」


私が渡されたジャージを慌てて抱きしめると、相葉先生はプッと笑った。


相葉先生は私が緊張している事に気付いてて、顔を赤くしたり、驚いたり、困った顔をしたり、クルクルと表情の変わる私を面白がってるに違いない。


もしかしたら、そうする事で緊張を解そうとしてくれていたのかもしれないけれど。