言わんこっちゃない。


まだ1分も経っていないというのに、雨の音はいっそう強くなった。

だから言ったのよ。



昨日からの予報が一転、今日は夕方から大雨になると今朝のニュースでやっていたのだ。
ダメ元で傘を持っていくように伝えたが、やっぱり彼はそれを拒否した。


「はは、大丈夫だよ、こんなに晴れてるし、ほら昨日アプリで見た時は晴れの予報だっただろ？」

あの男は、いつもの調子でそう言い放った。口のふちに歯磨き粉をつけた、私にしか見せない、間抜けな顔で。




■




もう十分履き潰したスニーカーは、防水性なんて欠片もなく、冷たい雨を吸収する。

気持ち悪い足先にまた腹が立つ。

あの男がきちんと傘を持っていけば、わざわざ駅まで迎えに行く必要と無かったのに。


“雨やばいね”

“だから言ったでしょ”

“そうだね、じゃあ西口のいつものとこで”


迎えに行くなんて一言も言っていないし、来てくれとお願いをされたわけでもない。

マイペースな彼の中で、私が駅まで迎えに行くことはもう決まっていたらしい。