ブーッ

バスが、停車し私は降りた。

あたりを見回す。

何1つ変っていないこの風景。

幼い頃、よく父の仕事場へ母と訪れたことを思い出す。

アノ頃の自分は、まだ感情があった。

人を想う心があった。

今とは大きく変わり、少しだけ自分で困惑してしまった。

ゆっくりとした歩きで、父のいる文部科学省へ。

私は、受付を済ませるとそのまま父のいる部屋へ直行した。

コンコンッ

ドアをノックして入る。

「お父さん、お久しぶりです」

私は、一礼した。

父は、いつものように微笑んで私を迎えた。

何も言わず、お茶を差し出した。

そして、父はタバコに火をつけ口を開いた。

「話は、校長先生から聞いてるよ。自分からやめるなんて浩子にしては珍しいな。まぁ……、人生山あり谷あれいだ。何も心配することはない。少しの間、こっちに居たらどうだ?そしたら、少しは落ち着くだろう」

タバコをすい始めた。

「私は、変っちゃったかもしれません。何もかも。教師なりたてとは違い、今の教育の厳しさに負われて……本来持つべき生徒を愛すことを忘れていたかもしれません……」

父は、私の話をしっかり目を見て聞いてくれた。