凱人~version


俺は 芸大の時に1年フランスに留学し パリで知り合いのデザイナーの元 修行を1年させてもらっていた。企画から携わり商品になるまでの 全てを学んだ。

大学に行くより有意義な毎日を送れ 刺激的な生活は感性を研ぎ澄ます。話せない言語は手こずったけれども、芸術は言葉なんて必要ないとは言えないが、何とか向こうでも うまくやっていけてたと思う。

約束の1年が経ち 俺は日本に帰って来て 芸大に戻る。1年前とは違い、人との距離感にさらに違和感を感じてしまったのだが…

俺の外見のせいなのか、大学生活も居場所がない 空気が薄い箱の中だった。俺は高校の時からその箱の中に既にいた。

這い上がれない 光だけを探す毎日。つまらない授業に、つまらない人間関係。どうしてか いつも俺を見る人の目は特別で…

だからいつも波風たたないように笑う…笑いたくもないのに…

心を許す友達もいない。何の面白みのない毎日が苦痛過ぎて 息を潜めて生きていた。

だから、高校の頃の事は 何も思い出せないでいた。ただ笑って過ごしていただけだから…

そんな俺に 遠縁にあたる人からチケットを譲り受け ファッションショーを見に行って、人生が変わった。

アートは人と比べたりしない
自由が前提 であるという事を…

芸術を学ぶ選択は 視野には全く今までの生活にはなく 目から鱗。自分の目指すものが見つかった瞬間だった。

違和感を感じながらも アートは俺の身に付けたのだろうか?自信なんかは今でもないが…最近は あいつのお陰で毎日が 回りの色が見える気がする。

あいつをあいつの個性を守りたい…強く思う俺は どこかおかしいのだろうか?