会社近くの裏通りにこんな店があるなんて…表通りは毎日通勤の為に通るのだけれど 一本脇に入るだけで 町並みも随分と違う。

しかも 先輩チョイスは渋い。絶対私の周りでは行かない 小料理屋の暖簾を潜る

「百瀬と飲むのは久しぶりだな。安藤ちゃんには この前振られたから 今日が初だな…」

「お前もう誘ったのか?流石だな…」

「嫌々 親睦を深めるには やっぱ飲まなきゃね…」

「あの、二人は仲良いみたいですが 同期なんですか?」

「ああ こいつとは腐れ縁で、大学も同じなんだ…」

「大学では 話したことはなかったけどな…」

「百瀬 群れないからな…」

「一匹狼的な感じなんですか?」

「ちょっと違うなぁ。う~ん説明が難しいや…とりあえず メニュー見て 酒頼まない?」

「はい。外飲み久しぶりなんで ちょっと楽しみ!何頼もうかな?」

「俺は…ビールで 百瀬はポン酒か?」

「ああ、スッキリなやつ頼むわ」

「私は…とりあえず梅酒で…」

瑞木さんが お酒と料理を適当に注文してくれる。

「安藤ちゃん、やっぱ面白いね…俺嵌まりそう…」

「瑞木は彼女いるだろ?余所見すんなよな…」

「え~!瑞木さん 彼女さんいるんですか?」

「何々?俺と もしかして付き合いたい?」

「いや、そこまでは言ってないし、考えていませんよ…」

「それにしても、この服 安藤ちゃんの体を綺麗に隠してるな…」

「瑞木さん、私コンプレックスなんです。だから今日見た事は 出来たら内緒にして欲しいです…」

「え~勿体ないな…手足も細くすらりと長いし、胸いつもどうしてんの?押さえ付けてんの?」

「更級を巻いて 出来るだけ目立たない様にしてます。私 体も行動も目立ちたくないんです。」

「瑞木…もういいだろ?」

過去の事を思い出すから 本当は身体の事は話したくない…

トラウマは 簡単には克服なんて出来ないんだから…

私の気持ちに いち早く気付いてしまう先輩の優しさが少し怖かった…