週明けの月曜日、久しぶりに電車に乗って会社に行った。

電車に乗る事には 抵抗がなかった筈なのに、電車に乗る事すら違和感。

おまけに 痴漢にも遭遇…気分は朝から急降下気味。いや、吐き気がする。

何とか会社にまでたどり着いたけれど、エントランスで最近のルーティンの竜野君に拉致られ 今日は会議室ではなく、医務室に連れられた。


「顔真っ青…そんなんでよく来れたね。先生、まだ来てないのかな?熱は大丈夫?」


おでこに手を当てる竜野君は 随分と優しい。


「あの、ありがとう…今日電車で来たら痴漢されて それから気分が悪くなったんだ…」

「何それ?信じられない。杏果、何されたの?」

「お尻と足触られた…」

「チッ。ムカつく…」

「電車久しぶりに乗ったのもあったし…明日から早い時間のに乗るよ。」

「あれ?毎日百瀬さんと来てない?」


よく見てるな、竜野君…


「今日は 別行動だったし。いつもは 最寄り駅が同じで 車に乗せてもらってたから、私考えたら甘え過ぎだね。」

「明日から 俺が車で迎えに行くよ。それなら電車に乗らなくていいだろ?」

~♪~♪
携帯が鳴る…


「おはようございます。圭さん、私今医務室にいます。ちょっと気分が悪いので 休んでいます。はい、よろしくお願いします。」


「竜野君も私大丈夫だから部に戻ってね。心配してくれて ありがとう。」

「ああ、少し寝てろな。じゃあ俺行くわ。」

パタンと扉が閉まると静かになって、急に寂しくなる。

コンコン…ノックされ扉を開けたのは先輩。

「どうした?」

その一言だけで、涙がポロリと零れた。私、どうしちゃったんだろ?

「……」


先輩は何も言わない。ただ私の涙を優しく 拭って、それから頭を撫でてくれる。

どうしてそんな事するの?

ハラハラと涙が溢れて 先輩の姿さえ見えない。

「泣くなよ。お前の涙は心が何故か痛くなる。どうしたらいい?」


先輩が側にいるだけでいい。他には何もいらない。思っただけで言えない言葉を 飲み込んで


「先輩のバカ…今日電車で痴漢された。私 先輩がいないと…ダメみたいです///」


ん…。

先輩何でキスするんですか?私勘違いしてしまうから。

さっきまでの気分が一瞬で治る私も 大概恋の熱に相当やられてる様で、先輩の顔がまともに見る事が無理だった。