「いてぇよ!美麗!」
無言のまま、首に腕を回しながら保健室に直行。
靴の色からどうやら彼は1年生の様。
後輩にもかかわらず、美麗呼びなのは知り合いだから?
「何々、喧嘩?♪」
「先生は黙ってて…!てか楽しそうにすなっ」
こういう恋愛、友情のイザコザがオカズの先生は置いといて。
「廉、あんたまた振ったの」
「振ったとかじゃなくて…一方的に告られて、付き合って、全然楽しくねぇから別れろって話しただけやし。俺なんも悪くないやん」
寧ろいつも被害者やねんけど!
そう言う彼は、イントネーションからして関西人?
「だから、告られて何となくで付き合う神経がおかしいのよ。付き合う前に断れって何度も言ってるでしょ」
「俺は兄貴とは違って恋とか分からんのやって!面倒臭いねん、好きとか、嫌いとか」
話の内容から、彼はモテるのだろうか。
こんがりと焼けた健康的な肌。
モデルの様なスラっとした体型と目鼻立ち。
おまけに都会じゃ珍しい関西人。
「ぁ、の…」
「あ、ごめんごめん。こいつ、七瀬廉。私の彼氏の弟」
美麗の…彼氏の…弟…?
関西人の彼氏…!?
「ぇ、美麗関西に彼氏いるんだ」
「そこかよ(笑)」
ケラケラと笑う先生は放置。←
「違う違う、廉と兄貴は今年の春に2人で上京してきてんの。で、私のバイト先に兄貴がやって来たわけ。で、その流れで」
「お付き合いをしていると…///」
「何で風花が照れんのよ(笑)」
「……なぁ、俺もう帰ってええ?これからバイトなんやけど」
頭をガシガシと掻きながら、痺れを切らしたように話しだす廉くん。
「はぁ?バイト?」
こちらは初めて聞いたようで、かなり怒モードな美麗さん。
「仕方ないやん、生活費稼ぐ為やって」
「仕方ないって…あんたねぇ、相談くらいしてくれたって良いだろ?」
「言ったら反対されるの目に見えてるし」
どんどん修羅場化していく保健室。
私達以外、誰もいなくて本当に良かった…、ってそうじゃなーい!
「ふ、2人とも落ち着いてっ…」
「風花、ちょっと付き合って」
ガシッと掴まれた腕。
「へっ…?汗」
「…こいつのバイト先行ってやる」
嗚呼、神様…どうか無事に今日が終わりますように。