「ちょっと、その辺にいるはずの勇者連れてきて」



「は?」

白山さんが素で驚く。

弦野くんと向き合っていた木村くんもこちらに振り返った。


「うん。勇者くん疲れてると思うから」


「は?」
「とりあえず、こっちのことはその間に片付けておくから、ヨロシクっ」


混乱の中、蛍はなんとか白山さんを王の間から勇者のもとへと転送した。

めでたし。めで………

「イタッ」

「すみませ~ん」
「なんで、水谷ちゃんが飛んでくんのっ」
「あっ、王座に汚れが」
「本読んでいいっすか?」


勇者くん、早く助けて。

喧騒の中、幻聴なのか、ずっとフキフキという音が聞こえていた蛍なのであった。