一方、魔王城では、魔女の蛍がちょっとした不満を抱えていた。
フキフキ、フキフキフキ。
「木村くん」
フキフキ、フキフキフキ。
「木村くんっ」
あれから5日。怒濤の勢いで進んでいる勇者に、木村くんは何の興味も抱くこともなく、毎日フキフキフキ。
何もしなくても来てくれるなら、それでいいそうな。
今日になってこっちの敷地に勇者がたどり着いてからもフキフキフキ。
これでは面白くない。
いや、フキフキフキしてる木村くんもシュールで好きなんだけども。
どもども、どもだ。
蛍はそんな木村の様子を見かねて今日、珍しく早起きをしていた。
割れたのを直した水晶玉を持って朝から木村くんの前をウロチョロ。
“わー、勇者がこっちの魔物を倒してるぞーっぞっぞぞぞー”
“強そうだなーんなーん”
“クレイジージーっ!”
“勇者の中の勇者しゃしゃーっ!!”
なんて木村くんの前でわざとらしく言ってみても、何の反応もない。
やってて、こっちが恥ずかしいわ。
終いには、“蛍さん、ちょっとよけて”と邪魔者扱いである。
いや、間違いなく木村くんの邪魔をしていたのだが。

