バンっとすごい音を立てて扉が開いたかと思うと、弾丸のように何かが飛び込んできた。叫びながらだ。
 


「さーかーしーー!!!」


 
半泣きの悲鳴のような叫びは、どうやら警備隊長、早本賢志を呼んでいる。


 
「……お、おう」

 
早本くんが返事をする頃にはソレは早本くんの肩に手を置いていた。


 
「置いていかれたよーっ!」


 
嘆くのは坊主頭の彼。そして彼が飛び込んだのは早本くんのお部屋……ではなく、使用人の談話室である。


 
「どうしたの?」
 
どうやら早本くんと同じテーブルで読書をしていたらしい弦野くんがちょっとびっくりしながら訊いた。
 


「魔王様に置いていかれたんだよ!俺も行ってみたかったのに、人間の国!!」
 

「いや、お前もともと行く予定じゃなかっただろ。」
 

冬城の叫びに、早本くんは呆れたようにツッコミを入れた。弦野くんはあははと笑っている。

 
冬城はしくしくと泣き真似をしながら早本くんと弦野くんの隣の席、間の席とも言う、に腰掛けた。



 
談話室で見る光景としては、なかなか珍しい光景である。いつもは、仕事の関係でこのメンバーが一堂に会することはなかなかできないのだ。



 
そう、ではなぜ今この組み合わせが見られるのか。それは、昨夜の仕事終了時の魔王のひと言による。