「心配事を増やすな」


「ごめん」

「ごめんってな………。お前はいつもそう言うけど本当に分かってるのか?」

「分かってる………と、思う」
 

ちょっと困った顔の木村くん。と、思う、なんて曖昧な返事をした。


「だったら___もう何も言うまいと思っていたがな、言わせてもらう」


「うん?」

「お前が自転車で一人で行ってしまった時、俺がどう思うか分かっていながら行ったのか?」


「えっと」


「行ってしまう前に、この俺があんなに散々言ってやったにも関わらず、全部無視して行きやがって、俺がどんな気持ちになったか分かるのか?」


「無視なんか___」

「してないって?ほざくなよ。俺の話をどんだけ聞いていたとしてもだ、制止を振り切って行ってしまうなら、無視と同じだ」


「うん…」
 
石川くんは落ち着いた話し方をしているのに、どこか威圧感を感じる重々しい声。そこに強い感情があることが窺えた。


「確かに、お前はお前だけのもんじゃないからな。どうしても、自分より優先しなきゃいけないことも出てくる立場だってことくらい理解はある。ただ___」



不敵な笑顔で石川くんが木村くんを見る。


「行くなら俺も一緒だ」