「石川くん、よかったね!」

「いいわけがないだろ。」

 
王の間を出て、人がいなくなった辺りで声をかけた。

軽い調子でにこにこと言えば、石川は心底迷惑そうだ。
 

「だいたい、なんで見たことも話したこともない人間のために命までかけなきゃいけないんだ。」

「大丈夫だよ~。石川くん最近剣に目覚めてたじゃない! きっと勝てるよ~!」

「君はずいぶんと無責任なことを言うな。だいたい、問題はそこじゃないんだ。」


 
脳天気な迷の声に、石川が深々とため息をつく。

え~、大丈夫なのに~、きっと勝てるのに~、と言い続ける迷に、表情を変えずに石川は言葉を返した。
 

「……まあ、君がそこまで言うなら、やってやらんこともないがな。そもそも、王にもそう返事をしてしまったのだし。」
 

ぱっと目を輝かせた迷。
 

「さっすが石川く~ん。頑張ってね。」