中学3年の春、クラス替えで、仲の良かった子たちと離ればなれになり、さやかは憂鬱な気持ちで新しい教室に入った。
すると、髪の毛を明るく染め、細身の男子が視界に入った。

「あんな子、いた?」

たまたま近くにいた女子に話しかけると、

「あれ、ブーだよ」

彼女は平然と答えた。

ブーと呼ばれていた、この男子こそ、戸田 由文(とだ よしふみ)。
中学2年生まで、違うクラスだったけれど、太っていた為、ブーと呼ばれていたのは知っていた。

由文は、春休み中に、ダイエットをして、スラリと見違えるように細くなり、外見もかっこよくなっていた。

その瞬間、さやかは由文に恋をした。
いわゆる、ひとめぼれ。

名前しか知らず、ほとんど見た目だけで由文に恋をしたけれど、それが今にして思えば過ち。